脳卒中にならないためには?
皆さんは「脳卒中」が、かつて日本人の死因の1位を占めていたことをご存知でしょうか?
医療の進歩とともに脳卒中の死因順位は低下し、令和2年には第4位にまで低下しましたが、人生100年時代となり、健康寿命を損ねる(寝たきり・要介護) 原因・第1位の病気となってしまいました。
脳卒中は、脳血管の動脈硬化が原因と考えられています。
昔は成人病と呼ばれていたものが、最近では小学生から動脈硬化が始まっているとも言われています。動脈硬化が避けられないのなら、その進行を少しでも遅くするよう考えて生活することが大切です。
前回ご紹介した「熱中症と間違えやすい?夏の脳梗塞」のお話も合わせてご覧ください。
脳卒中の原因になる病気や生活習慣
脳卒中を引き起こす原因として生活習慣の積み重ねがあります。
高血圧
血圧が高ければ高いほど、直線的に脳卒中の発症率は高まります。
目標値は合併症がある場合は130/80 mmHg未満、一方で75歳以上の方は下げすぎるとあまり良くない面もあり、150/90 mmHg未満を目標としても良いとされています。
糖尿病
糖尿病でも血管に負担がかかり、特に目の網膜など微小な血管に障害が起こります(糖尿病網膜症)。また、腎臓にも影響が出て血液や血管の障害にもつながります。糖尿病の人は健康な人より脳梗塞の発症率が高いため、脳卒中の予防には血糖値の管理も重要です。
不整脈
心房細動では、1分間に400~600回の速さで心房が細かく震えるように動き、心臓の中で血液の流れが滞り、血液の塊ができてしまいます。この血栓が脳血管に飛び、脳梗塞につながります。心房細動は加齢とともに増加しますが、動悸、胸の痛みや苦しさなど、症状が現れない方もいらっしゃいます。脈を測る、検査を受けるなどして、早期発見を目指しましょう。
喫煙
ニコチンが血圧を上昇させて、動脈硬化を促進すると言われています。喫煙本数が増えると、発症率が上昇するので禁煙が強くすすめられています。
飲酒
1日にアルコール量20g(日本酒なら約1合)程度の適正飲酒であれば、コレステロールを下げるなど良い効果も期待できます。しかし、アルコールを300〜449g/週以上飲むと、脳卒中(特に脳出血やくも膜下出血)のリスクが急増すると言われています。
脂質異常症
脂質異常症は、血中の脂質の値が異常である状態のことです。LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が増えすぎている、もしくはHDL(善玉)コレステロールが減りすぎているときに診断されます。特にLDLコレステロールが高いと、動脈などの血管にLDLコレステロールがたまって血栓になり、この血栓が血管を狭くしたり塞いだり、動脈硬化を引き起こします。総コレステロール値が1mmol/L(38.7mg/dl)増えると脳梗塞の発症率が25%増加することが明らかになっています。
これらの病気や生活習慣を「危険因子」と呼びます。高血圧・糖尿病・脂質異常症を予防するためには、塩分・脂肪分控えめの食事、適度な運動、適切な体重の維持などが推奨されています。
脳卒中の予防になる食べ物
健康的な食事は、脳卒中のリスクを減らすのに役立ちます。特に、血圧やコレステロール値に効果のある食材をご紹介します。
魚
サバやアジ、イワシなどの青魚に含まれるDHAやEPAは血栓を出来にくくし、LDLコレステロールを下げる働きがあります。青魚を週に2回以上、蒸しまたは焼き魚として摂取を心がけると良いでしょう。
野菜(緑黄色野菜)、果物
緑黄色野菜に含まれるβカロテンやビタミンC、ブルーベリーや苺に含まれるポリフェノールは抗酸化作用があり、活性酸素を除去する働きがあります。また、果物に多く含まれるカリウムは、体内の余分なナトリウムを体外に排泄し、血圧を下げる働きを持っています。
ジュースや加工品として摂取すると、糖分が多くなり、リスクが上昇する可能性があるので、なるべく生のまま、または軽く調理して摂取しましょう。
海藻
海藻に含まれるミネラルや水溶性食物繊維が血圧の安定に役立ちます。
食物繊維は整腸効果があることで有名ですが、実はコレステロールの値を下げる働きもあります。胆汁酸の排泄を促進することで、血中のコレステロール値を下げるのです。
わかめやのり、こんぶなどを日常の食事に取り入れることで、血圧の上昇を抑制する効果が期待できます。塩分の多い加工品よりも、できるだけ自然な形での摂取を心がけましょう。
オリーブオイル、菜種油
不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含む油は、LDLコレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化を予防します。過度な摂取はカロリーオーバーとなり、肥満の原因となる可能性があるため、注意が必要です。
大豆
大豆は、マグネシウムとカリウムを含みます。マグネシウムは筋肉と血管の収縮を防ぎ、血液が凝固しすぎないよう保つ働きがあります。
塩分や脂肪分を控えた調理法や、摂取量に気を付けながら、効果的な栄養素を取り入れるようにしてみましょう。
生活習慣病は目立った症状が表れないことがほとんどで、脳卒中や心臓病など大きな発作を起こしてから初めて気付くことが多いものです。
病気を未然に防ぐ「一次予防」の意識を高め、自分の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。